パネルセッション 1: 海からのカーボンニュートラル

地球温暖化の解消に向けて海から取り組む!

地球温暖化の主な原因とされている二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)の排出量を抑え、ゼロに近づけることを目指すカーボンニュートラルの取り組みは、工場や自動車だけでなく海を航行する船の分野でも進められています。海からのカーボンニュートラルを取り巻く状況について、どのような話題が取り上げられるのか。海上技術安全研究所のGHG削減プロジェクトチームでチームリーダーを務める平田宏一先生に話を伺いました。

─海のカーボンニュートラルとはどういう取り組みなのでしょうか?平田地球の上では陸も海もつながっていますので、地上だけでなく海でも温室効果ガスの削減に取り組む必要があります。関係者の間でもいずれは取り組まなければならないと考えられていましたが、2050年に現在の半分、今世紀中にはゼロにするという具体的な目標が決まりました。さらに前倒しになって早まるかもしれません。まだ時間があると思われるかもしれませんが、海は広いですし明確な境界線もなく、工場や自動車の分野に比べても船の方がより複雑な要素が多くて時間もかかるので、目標値としてはかなり厳しいものだといえます。

─どのような人たちが関わってくるのでしょうか?平田全体としては国土交通省の管轄になりますが、中心になるのはやはり船なので、造船メーカーやエンジンを開発する企業、船を運航させる企業などが関わってきます。また、船だけでなく港の運用や船に使用するエネルギーをバイオ燃料や水素に変えるといったことも検討しなければいけませんし、大学や研究所の協力も必要です。本パネルセッションの登壇者を見ていただければわかるとおり、いろいろな分野の専門家が連携しなければ実現は不可能ですし、長い取り組みになるので若い世代の活躍も不可欠です。本パネルセッションはそうした人たちが同じ課題を話し合うとても重要な場でもあり、ここでどれだけ共通認識を持つことができるかが、未来を変える鍵になるかもしれません。

─日本ではどのような取り組みができるのでしょうか?平田日本の立ち位置としては、世界の省エネに向けたリーダーシップでもあるので率先してカーボンニュートラルに取り組む必要がありますが、海に囲まれた国として持続可能な海運という考え方も必要です。例えば、二酸化炭素を減らすには造船の技術を変えなければいけませんが、カーボンニュートラルが足かせになって日本の産業や物流を止めてしまうことにならないよう、バランスを考えながら取り組み方を考えなければならないでしょう。

今後は対策の予算組みやスケジュールなど、具体的にどう動くかを決めていくことになりますが、海のカーボンニュートラルに関する取り組みは、できるだけ若い世代にたくさん参加してもらい、学校の授業でも取り上げてほしいと考えています。今回は様々な立場のパネラーが、参加者のみなさんと双方向で議論を交わす貴重な機会でもありますので、一人でも多くの人たちに関心を持ってもらえるように話題を取り上げ、共に次世代の海を支えるコミュニティーの一員になっていただきたいですね。