パネルセッション 2-2: 海の探査から開発まで ―海中ロボットと資源開発

応用範囲が拡がる海中ロボットの最新の話題とは?

パネルセッション 2-2では、海の探査から開発まで幅広く使われている海中ロボットの話題を取り上げます。沿岸域から南極の氷の下まで、人が直接行けない場所で活躍するロボットの開発はどのように行われているのでしょうか。コーディネーターを担当する東京大学の巻俊宏先生に話を伺いました。

─海中ロボットはどのようなものなのでしょうか?海中ロボットそのものは昔から使われていて、ROV(Remotely Operated Vehicle)と呼ばれる遠隔操作型の無人探査機は、浅海域から深海まで幅広く使用され、探査や工事をするのに不可欠でした。用途は資源探査、インフラ点検、漁業資源調査、学術調査、捜索救助活動など多岐に渡ります。最近は自律型のAUV(Autonomous Underwater Vehicle) の進化が著しく、日本でも実用化されつつあるのが大きな変化だといえます。

ニュースで話題になっている水中ドローンは小型で低コストなので誰でも扱えますが、用途は浅海での観測や軽作業に限られます。それを超えると大型の海中ロボットが必要となり、運用技術も必要です。開発に関しては海外が先行しています。欧米を中心に新しいAUVメーカーが次々登場し、登壇者でもあるOcean InfinityはAUVを複数同時に運用して一気に広範囲を探査する、斬新な調査手法を売りにしています。

─実際にはどのような所で使われているのでしょうか?私の研究室ではクレーンなどを使わず運べるほど小型軽量でありながら、複雑な海底に沿って動いて撮影できるAUVを開発しています。7月には小笠原諸島にできた西之島の探索にも使われました。また、本技術を応用して開発中のAUV MONACAは来年実施される南極の氷の下の探査に使われる予定で、今年の2月に北海道の氷の下で運用実験を行いました。本パネルセッションではこれらの実験についても紹介する予定です。

─海中ロボットの開発は難しいのでしょうか?センサやハードウェアについては海中独自の技術やノウハウがありますが、ロボット技術に関しては陸との共通点が多く、例えば研究室で開発しているロボットはROS(Robot Operating System)を使ってモジュール単位で運用を共通化することで、開発コスト下げようとしています。画像にしても条件を限定すれば地上と同じカメラが使えますし、センサやパーツ類も安くなってきたので、いろいろな分野から参入できるチャンスが高まっています。

─ハードウェアやエンジニアリングの話がメインになりますか?海中ロボットの開発は用途ありきで、それにあわせた形にしなければいけませんし、ハードウェアとソフトウェアをペアで考えなければ上手くいきません。特にAUVはソフトウェアが不可欠ですし、課題や用途も明確なので、それに向けて新しいアイデアを出せる人が求められています。登壇者は開発部門の方が多いのですが、実際の運用にも関わっているので、実例も交えながらロボットに詳しくない方でも楽しめる内容にしています。

─どういう分野の人たちに参加してほしいでしょうか?海中ロボットについては関係する学会での発表はあったかもしれませんが、幅広い分野の専門家が集まって全体を俯瞰した議論ができるのは、世界でも今回が初めてになると思います。これまでROVを使ってきた港湾や漁業関係者系者をはじめ、海やロボットに関心がある学生さんにとっては、AUVの最新情報を知ることができるので、それをきっかけに何かアイデアやチャンスにつながるかもしれません。日本はAUVに関してはまだプレイヤーが多くありませんが、最先端の技術を取り入れながら、状況が異なる海外とは別に独自の進化を目指すことも含め、開発について話し合う場になればいいいと考えています。